2004年8月UPLOAD
今年も落雷の多い暑い夏でした。
少し古い記事を若干手直ししました。現在でも充分参考になりそうです。
一部図や写真がありませんが文章でご想像ください。



雷のお話
                                       1993年7月
              Lightning
 地震、雷、火事、親父。昔から恐いものの順序がこんな風になっているものの、最近の最後の「親父」の権威は失墜ぎみ。他のものにとって代られているみたいです。

 さて、今回は2番目の「雷」にスポットを当てて特集してみました。入梅して以来、もういらないというくらいに今年は雨が多いですね。それに毎日の天気予報では必ずといってよいほど雷注意報、警報が出ています。

 雷発生のメカニズムの詳細は専門書に任せるとして、結果として、上昇気流によって大気中の粒子が帯電して雷雲が発生します。山の斜面に向って風が吹く、都市の熱気、海水や地面が太陽熱により熱せられるもの、寒冷前線(冷たい空気の上を暖かい空気が上昇する)、火山の噴火、その他の爆発によるもの、原因は様々です。


典型的な雷雲には積乱雲があります。地表面、海面と上空の大気との温度差が10℃以上になると積乱雲、俗に言う入道雲が発生します。上空には正電荷を帯びた小さく、硬く、冷たい粒子(氷の粒です)が上昇気流と釣合ったところに留まり、下方には大きく、柔らかく、暖かい粒子(水の粒です)が負電荷を帯びて雲を形成しています。

空高くそびえ立つタワーとアンテナ群。アマチュアのシンボルですが、恐いもののひとつが雷です。あなたのアンテナとタワー、雷に対しての対策は大丈夫ですか?


<直撃雷>
 雷さまといえども自然の電気的な現象。空気の電気的な性状、状態が一様であれば、雷の閃絡は一番短い距離で起りますから、直線的に高いところに落雷します。そして雷さまから見れば金属であろうが木であろうがコンクリートであろうがいっこうに構わず、まして雨でも降っていれば普通は絶縁物とみなされるものでもところ構わず落ちてきます。

とくに金属だから落ちやすい、というのは当てはまりません。私なら「くわばら、くわばら」と皆が外していった金属のアクセサリーを拾い集めて着けまくるのですが…Hi

 同じ高さの、例えばアルミ製のGPアンテナと、直径1mくらいのコンクリート製で先端が丸くなめらかな塔が並んで立っているとします。この場合は、GPアンテナに落雷する確率は高くなるかも知れません。それは落雷、即ち閃絡のきっかけとなる地上の突起物のコロナ放電(導体の周囲で空気が部分的に絶縁破壊を起している状態)が原因しているからです。先端の尖ったものはそうでないものに比べ、この部分の電位傾度が大きくコロナ放電を起しやすいからです。

 実験室ではそうですが、自然の状況では少し変ってくることもあります。雨も降っていれば風も吹いていて、大気の状態は一様ではありません。時として雷は高いビルの屋上にある避雷針ではなくビルの横っ腹に飛びつくこともあります。稲妻がジグザグに走ることでも想像できます。

<消極的対策>
 自分のタワーの周囲を見てみましょう。高いビルや鉄塔がいくつも周囲にあれば少し安心です。いきなり雷雲があなたのタワーの頭上に現れて、ドカーン!といかれたらこれは運の悪い人。大抵は移動してきますから、どこか他の高いところに落ちるか、通り過ぎることを期待しましょう。

               ここで簡単な計算をしてみましょう。
 待ちに待ったタワーが建ちました。接地工事は高圧設備の避雷器の接地と同じく第1種(最近はA種というようで)接地工事。接地抵抗は1Ω。接地工事の方がタワーの工事より高くついたのではないかと思うような完璧と思われるような値。

とりあえずHFはトライバンド3エレ八木に、2m、430のGP。そして同軸ケーブルを引き込みます。

 真夏の蒸し暑い夕方、空がにわかに掻き曇ったかと思うと運悪くGPに直撃雷。GPは完璧といってよいほどタワーに電気的に接続(アース)してあります。さほど大きな雷ではないとして雷撃電流は10kAとします。接地抵抗を1Ωとすると、単純計算でもタワーは10KVに電位上昇。電撃時の接地抵抗の逓減特性(衝撃大電流により、接地抵抗が減少する特性)があったにしてもあなたのリグと同軸ケーブルの間には大きな電位差が生じます。途中で絶縁破壊があり、直接伝わらないにしても、リグを破壊するのに十分な異常電圧が侵入します。


<積極的対策>
同軸ケーブルを接続している限り、直撃雷は避けきれないのでしょうか?
その答はきっぱりYESです。

 終段が真空管の古き良き時代。今みたいにほとんどがアンテナは50Ω、フィーダーは50Ωの同軸、ではなかった時代、古い書籍にはいろんなフィーダーの引き込み例が載っていました。下図はその例ですが雷が近づいてくるとスイッチを接地側に倒します。有効な避雷手段ではなかったかと思います。

 タワーに直撃雷があっても被害を被らない唯一の手段は同軸、ローテータの制御線を全て家から切り離しておくことでしょう。


誘導雷
 図のように雷雲が送電線へ接近したとします。送電線をアンテナのワイヤと置換えて考えて問題ありません。アンテナ上には地表近くの雷雲と反対の電荷が拘束電荷として現れます。雷雲から他の地上へ、若しくは雷雲間で放電が起ったとき、一時的に雷雲の電荷は消失するために、アンテナに誘起された電荷は自由電荷となり進行波となってリグに侵入してきます。

 程度によりますが誘導雷によるサージ電圧は市販の同軸避雷器で、ある程度低減できるものと思われますが、やはり万全を期すには同軸の切離しが最も有効な手段ではないでしょうか。
 
▲拘束電荷                              ▲進行波(サージ電圧)


<雷あれこれ>

雷センサ
 ゴルフ場、キャンプ場、屋外プール、郊外型運動競技場など、雷接近時にすぐ近くに避難する場所がないような施設には、襲雷センサが取付けられるようになりました。停電すれば、多額の損失の出る工場や、病院等の公共施設への電力供給をかかえる電力会社でも各地に雷センサを置き、顧客への雷警戒運転連絡等に利用されます。

車への落雷
 車の中は比較的安全と考えられています。雨でも降っていればシールド効果はもっと良いはずです。落雷する恐れのある場合には車を止め、できる限り車の中央で車体に触れないようにして、正座の格好でやり過しましょう。但し、車も万能ではなく、ガラス窓付近にぶらさげていた無線機のマイク→カールコード→無線機と内部に経路ができてしまうという事例も報告されています。

▲雷電流は車体からタイヤホイールを経て地面に流れます。

シールド効果:一般的には例えば体が濡れていたり、金属のアクセサリーを付けていると感電し易いように思われがちですが、雷さまの場合は若干様子が違います。
汗をかなりかいていたために体の内部を電流が通らず、表面を流れたので命を取り止めた、ペンダントから自転車の車体に流れ心臓を流れる電流がバイパスされて助かったなどの例は多く報告されています。
体表面を導電率の高いもので覆いシールドの役目をさせて体の内部に流れる致命的な電流を減少させる効果です。
 昔から金属に雷は落ちやすいなどといわれていますが、たぶん、金属部分に電流が集中し、発熱によりやけどを負った痕跡を誤解したものと思われます。命を取りとめるには例えばヘビメタのような格好が最良といえます。金属製の着ぐるみでもあれば・・・

木の陰でのサバイバル
 避雷針の保護角はおよそ45度(もっと厳密な表現方法もあります)といわれます。高い木の場合もあてはまります。何もない野原では高い木に落雷しやすいことも事実です。

周囲に全く何もなく自分の身長が落雷の標的になりそうな状況にもし出会い、仕方なく木のそばにかくれる必要のあった場合には

木の保護角内でかつ充分に木から離れて足を揃えて小さくうずくまるようにします。
木への落雷で図のようにアース電位が上昇し、一歩の歩幅でも人体にとって十分に感電する電圧(歩幅電圧)になりますのでこれを避けます。




レーザ誘雷
地上高く張り巡らされた送電線と鉄塔をかかえる電力会社にとって雷は昔からの厄介者でした。架空地線、避雷器、碍子のアークホーン等々、様々な方法で雷に対する対策を採ってきました。



送電線・鉄塔の架空地線
一番上の線です。送電線に落雷する前にこの地線で
受けとめよう、というものですが雷電流の大きさにより
鉄塔の電位が送電電圧より上昇し「逆フラッシオーバ」
現象が発生して停電にいたる場合もあります。

避雷針
重要な建造物に設置されます。
ただしこれも雷電流を地中に流す充分な能力がなければ
単なる「誘雷針」になり低圧回路、情報機器等に様々な
不具合を発生させることになります。

最近、実験室の中ではありますが、レーザによって雷の放電経路をコントロールするという方法が開発されました。
ピーク強度2GWの炭酸ガスパルスレーザを集光させて空気中に照射し、その経路をプラズマ化し、そこに放電経路を導こうとする装置です。
残念ながら写真は載せられませんが通常なら真下の人形に放電するものをZ字型に屈曲させて放電をコントロールした時の様子がきれいに写し出されています。


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